夢より素敵な時間を、初恋のきみと。

「本物のシンデレラみたい!」

最前列の席に座っている女の子が目を輝かせて言ってくれた言葉に、嬉しくなる。

美雲さんが用意してくれていたのは、シンデレラをイメージしたドレス。

淡いミントグリーンを基調にしたフリルたっぷりのとても素敵なドレス。

まるで自分が絵本の中から抜け出したみたいな、不思議な気持ちになる。

「実は音夢ちゃん、夢ヶ丘学園の1年生なんですよね」

雨沢先輩に話を振られて、一瞬戸惑う。

きっとこの流れで本名を公表しなくちゃいけないんだよね。

もう音夢としてのわたしは今日で終わりということなんだ。

そうだよね。もとはこのプロジェクトのためのモデル活動だったんだもん。

このプロジェクトが終わったら、わたしはもう音夢になる必要なんてないんだ。

そう、まるでシンデレラと同じ。

時間が来たら、わたしは地味子の美夢に戻らなくちゃいけない。
< 77 / 156 >

この作品をシェア

pagetop