夢より素敵な時間を、初恋のきみと。
「地味子のクセに、サインとか。ホントムカつく!」
「調子乗ってんじゃねぇよ!」
そう言いながら、取り巻きのひとりがわたしに向かって手を振り上げた。
――ぶたれる!
そう思って目を閉じた瞬間。
「何してるの?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「俺の大事なお姫様に怪我させたら、君たちこの学校にいられなくなるよ」
「……え?」
「……は?」
わたしと如月さん達の声が重なる。
驚いて顔を上げると、目の前に如月さん達を睨むように見つめている皇月先輩がいた。
「行こう」
皇月先輩は、わたしの手を取ると唖然としている如月さん達の横を足早に通り過ぎていく。
誰もいないホテルの裏口まで辿り着いた時。
「先輩、あんなウソついちゃっていいんですか?」
わたしがそう訊ねると、
「月島はイヤだった?」
逆に先輩に聞き返された。
「え!? イヤだなんて、そんなことないです!」
むしろ、すごく嬉しかったけど。