夢より素敵な時間を、初恋のきみと。
絶対に、学園の王子様である皇月先輩が地味子とつき合ってるなんて悪意のあるウワサが一気に広まってしまう。
そうしたら皇月先輩に迷惑をかけることになるから。
「周りのことなんか気にするな。言いたいやつには言わせとけばいい」
ああ、どうして。どうして先輩は、わたしの思ってることがわかるんだろう。
「月島?」
泣きそうになってうつむいたわたしを、先輩は不思議そうな表情で見ている。
「……です」
「え?」
「皇月先輩が好きです」
ずっと「わたしなんか」って思ってた。
でも、先輩のおかげで、自分にほんの少し自信が持てるようになった。
自分の力を信じられるようになった。
だから、たとえ結果はダメでも自分の気持をしっかり伝えたかった。
「………」
皇月先輩は黙ったままで、わずか十数秒の沈黙がとても長く感じられた。
そして、返ってきた言葉は……
「ありがとう」
とても優しい言い方で。
顔を上げると、先輩が優しく微笑んでいた。