夢より素敵な時間を、初恋のきみと。

「なに、その曖昧な感じ。美夢ちゃんはずっと気になってた初恋の子なんでしょ? きちんと言わないとダメだよ!」

珍しく感情的になっている凛に、少し驚いた。

「なんでそんなムキになってるんだよ」

「だって美夢ちゃんが約束してくれたから」

「約束?」

「わたしなんかって逃げないで七星くんに告白するって。だから……」

「凛ちゃん、そろそろメイク入るよ~」

言いかけたところでタイミング悪くスタッフから声がかかった。

「とにかく、七星くんの気持ち美夢ちゃんに言ってあげてね!」

凛はビシッと人差し指を俺に向けてそう言うと、楽屋へ向かって走って行った。

初恋の子、か。

自分の楽屋に向かいながら、さっき凛に言われた言葉を思い出す。

俺が初めて美夢と会って話したのは、高校に入学するずっと前、小学4年生の時だ。

美夢は完全に忘れてるみたいだけど。

あの時、美夢が言ってくれた言葉があるから、俺は今こうして人気モデルとして活躍できているんだ。
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