海辺の夜空に願う
出会いと別れ。
忘れられないあなたに出会ったのは、凍えるような風の吹く
12月 海辺の夜空の下。
色々なことが重なり 不安や後悔、暗い感情に飲み込まれそうになってどうしようもなくなり行き着いた海だった。
その日はとても寒くて、1人で海を眺める私の心を天気に映したかのように冷たく強い風が吹いていた。
流れてくる風の中ふとタバコの香りがした。
普段なら嫌でたまらない香りだけど、その日は何故かとても落ち着く香りだと思ったのをよく覚えている。
香りが漂ってくる方を見てみると若い男がひとり、黄昏ていた。
言い訳をするのであれば、私は疲れていた。
一人でいる寂しさも何もかもがもう、嫌になっていたのだ。
そして何を血迷ったのか、私はその男に声をかけていた。
「おにーさん、こんなところで一人で何してるんですか?」
「おねーさんこそ、女の子がこんな時間に何してんの?危ないよ〜。」
声をかけたら振り返った男は、思ったよりも柔らかい雰囲気だった。
「私ですか?私はですね、やさぐれてたんです笑。っていうか、質問を質問で返さないでくださいよー!」
「あはは、」
男は笑うだけで質問には答えてくれなかった。
ただ、その笑顔がやけに心に引っかかった。
「ねぇ、おねーさんの名前聞いてもいい?」
「私?私は 碧 葉月 って言います。おにーさんは?」
「俺はね、五十嵐 蓮 って言います、よろしく。」
「よろしくお願いします。よろしくついでに、蓮さんの連絡先聞いてもいいですか?」
「よろしくついでって、不思議な言い方するな〜笑
いいよ、葉月ちゃんおもしろいから教えちゃう〜。」
男、、蓮さんはさっきまでの雰囲気とは全然違って、よく笑う人だった。
その後も、心地よく会話が続いて寒さが限界を迎えた頃、また会えるといいねと言葉を交わして帰路に着いた。
これが私と蓮の出会い。
蓮は不思議で、家に着く頃には心の中に既に棲み着いて隣にいないことが酷くさみしかった。
ねぇ蓮、この時からずっと私は蓮に恋をしていくんだ。
この頃は自分のことで精いっぱいだったからきづけなかったけれど
蓮も何かを抱えてあの日、あの場所にいたんだよね。
蓮は自分のことあまり話してくれなかったけれど
次会う時にはちゃんと聞かせてね。