海辺の夜空に願う
それから何かと蓮と会うことは多くて、蓮の持つ柔らかいのにどこか冷たくて、儚いような不思議な雰囲気に惹かれていった。
いつからだったかは分からない。呼び方が蓮と葉月になった頃からだったのか、意識し始めたのはその頃からだったかもしれない。
多分お互いに居心地は良かったんだと思う。相変わらず蓮は自分のことを話すことは無いけれど、、。
会話のテンポも心地いいものだった。
聞いて欲しいことは聞く、でもお互いに触れてほしくないラインはわきまえていて聞いて欲しくないことは聞かない。
明確な何かがあったわけじゃない。互いに子供じゃなかった。
ただそれだけ。私たちは次第に男と女の関係になっていった。
そんな関係になってすぐ、私は蓮に抱いている気持ちに気づいた。
気づいた時にはよくここまで育てたなと思えるほどに大きな感情になっていた。
無視できないその感情に泣かされることも多かった。
今までは気にならなかった蓮の踏み込めない領域の多さに、勝手に切なくなっていた。
蓮の特別になりたい。わがままにもそう思っていた。
「ねぇ、蓮」
「んー?」
情事の後特有のまどろみの中蓮を呼んだ。
「蓮にとってさ、私ってどんな存在?」
しまったとおもった。
ポロッと口からこぼれてしまった言葉に焦りながらも、バレないように平然を装いながら答えが返ってくるのを待った。
「まぁた葉月は不思議なことを言うなー」
「蓮はいつも質問に答えてくれないね。」
出会った時だってそうだった。連はいつだってはぐらかしてばかりだ。
「うーん。そうだな、大切な人ってとこかな。」
蓮はいつだってはっきりとした答えをくれない。
そんな蓮がくれた〝大切〟という言葉は私を舞い上がらせるのには充分すぎる言葉だった。
「そっか、」
私は喜んでるのがバレないように噛み締めながらそう答えた。
私は今でもこの時のことを後悔している。
どうしてあんなに素っ気なく答えてしまっんだろう。
この時、蓮の異変に気づけていれば何かが変わったかもしれないのに。
それっきり、蓮は突然連絡が取れなくなってしまった。
連がいつもまとっている香りのするタバコを残して。
ねぇ蓮、実はね蓮がベランダでタバコを吸う時時々泣いていたのを知ってたんだ。
あの最後の夜、蓮は何を思ってあの質問に答えてくれたの?
わかるような気もするけど、合っているかは蓮に聞かなきゃ分からないから
またいつか会えた時に聞くね。
私も蓮のこと、大切で大好きだよ。