だって、そう決めたのは私
「その子ね、泣き始めちゃったんだよね。カレーを食べ終えるや否や、ポロポロって。何かあったんだろうね。お友達が背を擦ってくれてたから、大丈夫だったんだけど」
「大人の女が外で泣くなんて、余程のことがあったのかも知れないね。心配だったとしても、匡は声掛けられないでしょう。アイツ、そういうの見るとテンパるじゃない」
匡は不器用な男だ。気持ちを言葉にするのが酷く下手。大事な言葉を口に出来ず、恋愛においては失敗ばかりだった男だ。年を重ねたからと言って、それが変わったとは思えない。
「まぁねぇ。でも、今回のまぁくんは違ったの。試食してもらえますかって、プリンをおまけに出したんだよ」
「プリン? そんなのあったっけ」
「ううん。ない。たまたま試作で作ってたのがあってね。良かったら食べてもらえませんかって、千夏にわざわざ持って行かせてさ。もう焦れったくって。自分で持って行って、昨夜はどうもって言えばさ。話せるじゃん。なのに……おじさんになったら、恋ってしちゃいけないものかねぇ」
「えぇ、そんなことないでしょう。想える相手がいることは、素敵なことよ。それに匡はみ……未婚なんだから」
あぁ失敗した。匡の結婚に触れるなんて。宏海が、また悲しい顔をした。そして、私の心が小さく悲鳴を上げる。
私の中に確かにある宏海を思う気持ち。キュンとときめくことはなくても、宏海がいるだけで安心できる。家族愛みたいなものだと思っていたのに。さっき、そうではない感情を認めた。だから、きっと欲が出たのだ。もう少し一緒にいたい。もう少し、触れたい。前に、頭を撫でてくれたように。穏やかに、とても穏やかに微笑む彼が愛しかった。上手くいくかしらねぇ、と誤魔化して、嘘くさい笑顔を添える。この感情の輪郭。それを自覚をしてしまった今、私は彼の恋を応援できるのだろうか。
「大人の女が外で泣くなんて、余程のことがあったのかも知れないね。心配だったとしても、匡は声掛けられないでしょう。アイツ、そういうの見るとテンパるじゃない」
匡は不器用な男だ。気持ちを言葉にするのが酷く下手。大事な言葉を口に出来ず、恋愛においては失敗ばかりだった男だ。年を重ねたからと言って、それが変わったとは思えない。
「まぁねぇ。でも、今回のまぁくんは違ったの。試食してもらえますかって、プリンをおまけに出したんだよ」
「プリン? そんなのあったっけ」
「ううん。ない。たまたま試作で作ってたのがあってね。良かったら食べてもらえませんかって、千夏にわざわざ持って行かせてさ。もう焦れったくって。自分で持って行って、昨夜はどうもって言えばさ。話せるじゃん。なのに……おじさんになったら、恋ってしちゃいけないものかねぇ」
「えぇ、そんなことないでしょう。想える相手がいることは、素敵なことよ。それに匡はみ……未婚なんだから」
あぁ失敗した。匡の結婚に触れるなんて。宏海が、また悲しい顔をした。そして、私の心が小さく悲鳴を上げる。
私の中に確かにある宏海を思う気持ち。キュンとときめくことはなくても、宏海がいるだけで安心できる。家族愛みたいなものだと思っていたのに。さっき、そうではない感情を認めた。だから、きっと欲が出たのだ。もう少し一緒にいたい。もう少し、触れたい。前に、頭を撫でてくれたように。穏やかに、とても穏やかに微笑む彼が愛しかった。上手くいくかしらねぇ、と誤魔化して、嘘くさい笑顔を添える。この感情の輪郭。それを自覚をしてしまった今、私は彼の恋を応援できるのだろうか。