だって、そう決めたのは私
「ウザがるっていうのは、分からないけれどね。例えば、好きですってまた言うよりも、今度は二人で出かけませんかって誘ってみたらどうだろう」
「ふ、二人でですか」
「そりゃそうよ。あと数回は三人ないし四人でも良いのかも知れないけれど、いつまでもそうわけにもいかないし。それに暁子なら、二人に抵抗があれば、ちゃんとそう言うと思う。また四人でどこかに行こうかとかって」

 なるほど、と言う五十嵐くんの表情が曇った。今日のように四人ならば気軽に誘えるのだろうが、二人で、と誘って断られてしまったら? 今彼の頭の中でぐるぐると回っていることが、手に取るように分かる。きっと大丈夫だよ、と言ってはみたものの、無責任な言葉でしかないなと思った。チラリと暁子に目をやると、グラスを見ていたであろう宏海に土産の饅頭を選ばせている。あれは多分、休憩時の皆のおやつにでもなるんだろう。

「緊張はするけれど、アクションは起こさないといけないですよね」
「まぁ、連絡先は交換してるんでしょう? なら、飲みに行きませんかとか、気軽な誘いだって後日出来るわけじゃない」
「はい」
「お洒落なレストランよりも、今日みたいな蕎麦屋とかの方が、暁子は好きよ」
「なるほど。勉強になります」
「さて、この後どうしようか。どうせ、家まで送るんでしょう? そうするとどこかのタイミングで夕食ってなるけど、二人がいい?」

 五十嵐くんは腕を組み少し悩んでから、このまま四人で、と答えた。ならば何を食べるか。暁子のことだから酒はマストだ。二人で検索を始め、ここはどうか、など言い合う。彼はきっと多少は見繕っていたのだろう。小綺麗な店ばかりチョイスされる。私が示す大衆酒場とは大違いだ。
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