だって、そう決めたのは私

第25話 大切な時間

「いやぁ疲れたねぇ。宏海、今日はありがとう」
「ううん。僕も楽しかったから、気にしないで」

 家に帰った僕らは、ソファーに流れ込んだ。カナちゃんはあれこれ気苦労があったのだろう。肩をぐるぐる回して、疲れたぁ、と大きく伸びをする。こうした気の抜けたカナちゃんを見るのは、好きだ。きっと今では、僕しか知らない顔だろうから。そんなちょっとした優越感に浸りながら、僕はタイミングを見ていた。まだ、ミッションが残っているのだ。

「麦茶飲む?」
「あぁ、そうだね」
「ちょっと待ってて」

 いつものように声をかけてキッチンに立った。二つのグラスに麦茶を入れて、ふぅ、と一息。それをテーブルに並べて、僕はくるりと向きを変える。ダイニングに置いた紙袋から、包みを一つ取り出して、カナちゃんの前に置いた。
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