だって、そう決めたのは私
「ん、何?」
「何だろう……お土産? というか、記念に」
「記念?」
「うん。一緒に旅行とかしたことないでしょう? 何かもっと仲良くなれたかなって思って。嬉しかったから買ってみた」
「仲良くって……えっと、開けていい?」
「どうぞ」

 カナちゃんがガサゴソと包みを開ける。それも、とても丁寧に。ゆっくりとテープを剥がして、包みを解く。中など大したものではなくて、東京タワーの土産だ。もう少し良いものをあげたかったな。また次、があったら、考えてみよう。

「マグカップ?」
「うん。観光土産にしてはシンプルでしょう。だから、仕事場とかで使っても良いかなぁって。その……嫌かも知れないけれど、僕もね買っちゃった。色は違うんだけどお揃いの」
「お揃い……」
「ごめん、嫌だった?」
「う、ううん。そんなことないよ。ありがとう。明日から使おうかな。ふふ、大事にするね」

 両手でカップを握って、カナちゃんがまた「ありがとう」と微笑んだ。一安心の僕は、暁子さんに盛大に感謝している。数時間前のこと。あの時彼女は、唐突にこう言ったのだ。宏海くんはカナコのことが好き? と。
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