だって、そう決めたのは私
 カナちゃんと僕の関係は、暁子さんからすればきっと不健全だ。特に彼女は今、渉くんとの関係を真剣に考えている。親友のカナちゃんにも、幸せな生活を望んでいるはずだ。僕を真っ直ぐに見た暁子さんは、不躾にごめんなさい、と何度も謝った。悪いと思いながらも、この僅かな隙に確認がしたかったのだろう。カナコに幸せを諦めて欲しくなくて、と暁子さんは悲しそうに笑った。あぁ、カナちゃんのことを本当に心配してるんだ。そう思った。僕にとっての、まぁくんのように。

「でも、私には宏海がいるじゃない」
「え?」
「え? このまま何もなければ、この生活は続くわけでしょう?」
「そうだね、うん」
「なら、私は一人じゃないよ。宏海が傍にいてくれる。まぁそれで言ったら、暁子にだって茉莉花がいるんだけどね」

 へへっと口元を綻ばせたカナちゃんと目が合う。ドキドキするのは僕だけなのは寂しいが、彼女もこの生活を守ろうとしてくれている。そんな気がしていた。

「今のままでいる限り、カナちゃんのことは僕が守るよ」

 サラリと言葉が出たけれど、凄く恥ずかしくてカナちゃんのことが見られなかった。もう少し余裕のある大人なら、優しい笑みでも浮かべるのだろうか。ありがとう、とカナちゃんが言う小さな声。拒否されなかっただけ、きっとマシだ。少し間を空けてから、ニコッと微笑み返した。余裕のある振りをして。
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