だって、そう決めたのは私
「あ、そうだ。明日、定時ですぐ帰るね」
「ん、何かあった?」
「会社の親睦会に顔を出さなきゃいけなくって。弁当箱持ったまま家通り過ぎるのも、だるいし。それに暁子ほどフランクな付き合いの場ではないから、一応シャワー浴びて行きたいんだ」
「おぉ、それは確かに。じゃあ、少し早く上がっていいよ」
「本当? 助かる。イレギュラーがなかったら、そうさせてもらうね」

 一度家に帰ってしまうと、出るのが面倒にはなるけれど仕方ない。動物の匂いに敏感な人もあろうし、オペもする。着飾るわけではないが、一応マナーのようなものだ。一人飲みだったり、宏海や暁子と飲むだけならば気にしないんだけれど。

「あ、そうだ。毎年のことだけど、十六日も有難うね」
「ううん。それは、カナコにとってマストでしょう?」

 口元にだけ笑みを乗せて、小さく頷いた。九月十六日は、無理言って毎年休ませてもらっている。私の中で、忘れるはずのない大切な日。暁子が静かに私を見つめ、いくつになる? と問うた。嬉しいけれど、苦しくて悔しい。でも必死に笑って答えた。

「もう二十五よ」

きっと私は今、泣いてしまいそうな顔をしている。
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