だって、そう決めたのは私
第27話 不可侵領域
「百合、ごめん。遅くなって」
「いやいや、お疲れ様。向こう大丈夫だった?」
「うん。今日は暁子が少し早く帰してくれたの。分かりの良い院長で助かってます」
「本当。暁子ちゃんっていい上司よねぇ」
親睦会に遅刻して合流し、百合の脇に滑り込む。そしてすぐさま、ビールでいい? と問う彼女に私は心底ホッとしている。三十年以上前から変わらない友人に。そう言えば、百合と暁子は似ている気がする。しっかりしているようでしていない私を叱ってくれる。時折三人で飲む時なんか、いつも二方向から同じような指摘を受けるのだ。それは大体が宏海のことだけれど。あぁ、こうしてササッと飲み物を頼んで、私が好きそうなつまみを皿に盛るところは百合だ。暁子には見られない。
「カナコさん、遅いですよぉ」
まだ箸も持たず、おしぼりで手を拭いている私に、急に背後から声が掛かる。振り向けば、剥れる関根さん。今日も可愛らしい格好をしていて、感心してしまう。あのくるくる巻かれた髪は、毎朝セットするのだろうか。あれ、いつもはどうだったか。気になって思い出そうとしていると、百合が彼女を制する。何か納得できていない彼女は、だってぇ、と口を尖らせた。よく分からないが、結構飲んだようだ。
「いやいや、お疲れ様。向こう大丈夫だった?」
「うん。今日は暁子が少し早く帰してくれたの。分かりの良い院長で助かってます」
「本当。暁子ちゃんっていい上司よねぇ」
親睦会に遅刻して合流し、百合の脇に滑り込む。そしてすぐさま、ビールでいい? と問う彼女に私は心底ホッとしている。三十年以上前から変わらない友人に。そう言えば、百合と暁子は似ている気がする。しっかりしているようでしていない私を叱ってくれる。時折三人で飲む時なんか、いつも二方向から同じような指摘を受けるのだ。それは大体が宏海のことだけれど。あぁ、こうしてササッと飲み物を頼んで、私が好きそうなつまみを皿に盛るところは百合だ。暁子には見られない。
「カナコさん、遅いですよぉ」
まだ箸も持たず、おしぼりで手を拭いている私に、急に背後から声が掛かる。振り向けば、剥れる関根さん。今日も可愛らしい格好をしていて、感心してしまう。あのくるくる巻かれた髪は、毎朝セットするのだろうか。あれ、いつもはどうだったか。気になって思い出そうとしていると、百合が彼女を制する。何か納得できていない彼女は、だってぇ、と口を尖らせた。よく分からないが、結構飲んだようだ。