だって、そう決めたのは私

第29話 あの子は一体

 昭和の時代の照明。丸い電球をくるくると回し、新しい物と交換する。LED照明が普及してからというもの、こういう行為をしなくなったな、と思う。少し黄ばんだ電気の傘。懐かしくて温かい気持ちになるのは、僕もそういう時代を過ごしてきた証なのだろう。

 カナちゃんは、一人娘。少しずつ彼女は、この家の照明を買い替えている。電球の交換も心配になってきた頃から始めたらしいから、もうあと少しだ。一度に変えてしまうと寂しいだろう。キッチンは母の居場所だったから一番最後にする。彼女はそう言っていた。きっとそれも両親には伝えていない。こんな風に不器用で優しいのが、カナちゃんだ。あぁそうだ。ここに来ることをカナちゃんに連絡していない。直接僕に義母から連絡が来たから、多分彼女は知らないままだろう。一応、メッセージくらい送っておくか。

『電球切れたからって連絡もらって、カナちゃんの家に来たよ』

今の時間はまだ、彼女は診察中だろう。簡単なメッセージを送って、フゥと一息吐いた。どうせすぐに既読は付かない。

 カナちゃんと《《結婚》》してから、この家には一緒に来ることが多かった。彼女は親を安心させたかったのだと思う。きちんと夫婦のふりをして、仲良くやってるよ、と見せに来るのだ。それは僕の家にも同じ。ただ最近は、彼女よりもここに来ていると思う。アトリエからも近い。きっと、忙しい娘よりも些細なことが頼みやすいと思ってくれているのだろう。
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