だって、そう決めたのは私
「宏海くん、お茶入ったよ」
「はぁい。有難うございます」
「ご飯は食べたんでしょう?」
「あ、はい。ちょうど食べた後でした」
座卓があったであろう時代を経て、客間に置かれたテーブルセット。四脚の椅子のうち、一番傷が少ないのが僕の席だ。既に居た義父と向かい合って座ると、わざわざ悪かったな、と彼は言った。ポツポツと二人で話をして、三人揃えばテレビから聞こえる音に釣られた話題に変わる。まぁこれはいつもの流れだ。自分の実家に行っても、大体は同じ。子どもたちの近況さえ問うてしまえば、そういう雑音に釣られるか、昔話をするかなのである。
「カナコは昔っから、こうと思ったら曲げない子でねぇ」
「あぁ……分かるかも」
「でしょう」
カナちゃんと似た黒い瞳が、くるくる揺れる。義母は昔話をしながら、懐かしいわね、と義父に笑いかけた。
「昔から、カナちゃんは優しい人ですよ」
それは僕にとって当たり前の言葉で、嘘なく自然と出てきたのだが。二人は驚いたように黙ってしまった。何か気に障ることだったろうか。
「カナコは、外ではそんな風に受け取られてるのね。五十過ぎた娘だけれど、他所でどんな顔をしているのか心配でね。私たちが考えつくのは、ワガママ言ってないかしら、とかばかりなの」
「そうなんですね。僕の知り得る限り、カナちゃんはとても優しい人です。でも、ちょっと不器用だから……それがネックかも知れないですね」
僕の苦笑を見て、義父母は嬉しそうに見えた。ちゃんと娘を見てくれている。そう思ってもらえのただろうか。そう思うと少しホッとして、二人の間から見える写真立てを眺めた。カナちゃんの子供の時の写真ばかりだ。一人娘である彼女を、とても愛している。それがよく分かる景色だった。
「はぁい。有難うございます」
「ご飯は食べたんでしょう?」
「あ、はい。ちょうど食べた後でした」
座卓があったであろう時代を経て、客間に置かれたテーブルセット。四脚の椅子のうち、一番傷が少ないのが僕の席だ。既に居た義父と向かい合って座ると、わざわざ悪かったな、と彼は言った。ポツポツと二人で話をして、三人揃えばテレビから聞こえる音に釣られた話題に変わる。まぁこれはいつもの流れだ。自分の実家に行っても、大体は同じ。子どもたちの近況さえ問うてしまえば、そういう雑音に釣られるか、昔話をするかなのである。
「カナコは昔っから、こうと思ったら曲げない子でねぇ」
「あぁ……分かるかも」
「でしょう」
カナちゃんと似た黒い瞳が、くるくる揺れる。義母は昔話をしながら、懐かしいわね、と義父に笑いかけた。
「昔から、カナちゃんは優しい人ですよ」
それは僕にとって当たり前の言葉で、嘘なく自然と出てきたのだが。二人は驚いたように黙ってしまった。何か気に障ることだったろうか。
「カナコは、外ではそんな風に受け取られてるのね。五十過ぎた娘だけれど、他所でどんな顔をしているのか心配でね。私たちが考えつくのは、ワガママ言ってないかしら、とかばかりなの」
「そうなんですね。僕の知り得る限り、カナちゃんはとても優しい人です。でも、ちょっと不器用だから……それがネックかも知れないですね」
僕の苦笑を見て、義父母は嬉しそうに見えた。ちゃんと娘を見てくれている。そう思ってもらえのただろうか。そう思うと少しホッとして、二人の間から見える写真立てを眺めた。カナちゃんの子供の時の写真ばかりだ。一人娘である彼女を、とても愛している。それがよく分かる景色だった。