だって、そう決めたのは私
「あ、もうこんな時間。帰らないと」
「あら、忙しいのね」
「はい。有り難いことに。今日は、そのサイトの担当者と打ち合わせなんですよ」

 最後の茶を啜ってから立ち上がる。お菓子でも持って行って、と言い出した義母に苦笑していると、同じような顔で眺めていた義父と目が合った。いつもなんだよな、と呆れたように零したが、その瞳はそれを愛しいと感じているように見えた。

「またゆっくり来てね」
「はい。今度はカナちゃんと一緒に」

 袋一杯の菓子を受け取り、二人に頭を下げた。目元は母親だけど、口元は父親に似ているな。ぼんやりとそんなことを思い、幼いカナちゃんの写真にそっと目をやる。

――あれ?

僕の目に、見たことのない子供の写真が映った。
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