だって、そう決めたのは私
「お義母さん、本当はカナちゃんに来て欲しいんだと思うよ」
「それなりに連絡はしてるんだけどね」
「いやぁ、やっぱり顔を見たいんだよ。きっと。でも、カナちゃんが忙しいのも分かってるから、お義母さん我慢してるんじゃないかなぁ。僕からカナちゃんの近況を聞けるのも嬉しいのかなって思ってるよ、最近は」

 そうかしらね、と言ってしまう娘は薄情なのか。顔を合わせれば、母はあれこれ聞いてくる。それが煩わしいのだ。けれど、心配は心配。実家の照明を変えているのは、両親との話題作り。それを少しずつやるのは、私の為なのである。

「あ……ねぇ、カナちゃん。あのさ」
「ん? どうした」
「あぁ……えっと。いや、いいや。とりあえず食べよう。今日はタコライスだよ」
「わぁ、美味しそう。いつもありがとうね」
「いえいえ。僕は、夫ですから」

 胸を張ってみせた宏海に、フフッと笑った。彼の優しさに、家族総出で世話になってしまっている。私がこんな生活に誘ってしまったから、彼に面倒くさい事柄を増やしてしまったのだ。今日、それを深く実感した。

 だから今日は、宏海の話をとことん聞こうと思っている。家の話でも、仕事の話でも、恋の話でも。どうせきっと、今に始まる。

「そうそう、まぁくんね」

ほら、ね。
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