だって、そう決めたのは私
「すみません、中野です。遅くなりました」
「あぁ、カナコ。大丈夫だった?」
「大丈夫、大丈夫。お待たせしてすみません」
百合と話していた筋肉質の男性が振り返る。池内さんだ。ニカッと爽やかに微笑む体育会系が、こちらに居直った。
「ご休憩中でしたよね。すみません。トリーツの成分の確認と、今後のお話を少し伺いたくて」
「あぁそうでしたか。えぇと、どんなことでしょう」
池内さんが見せる資料は、無骨な文字が書き加えられていた。きっと彼は真面目なのだ。聞き流して良いことまで全て書き留めている。確かに見た目は暑苦しいかも知れぬが、こういう人こそ相手をきちんと見て愛してくれるタイプだと思う。見目だけに囚われては見えない。相手をじっくり知っていかなければ、気付けないところかも知れない。
少し離れたところで盛り上がっている若い子たちに、チラリと目をやる。池内さんよりも少し背の低い、細身の男性の背中が見えた。
「若い子は楽しそうで、いいですよね」
「え? 池内さんだって、お若いですよ?」
「あぁ、本当ですか。もう三十五になるので、彼らの中に入ると浮くんですよね。若いつもりではいるんですけど」
新卒と三十五じゃ差がありますよね、と笑う顔が寂しそうだった。
「いやぁ、でも関根が突っ込み過ぎですね。あれ、仕事忘れてるでしょう。後で注意しておきます」
申し訳ありません、と百合は頭を下げた、ひどく呆れた眼差しを部下に向けた。それから、大きく溜息を吐く。きっと私たちが思っていることは同じだ。
「あぁ、カナコ。大丈夫だった?」
「大丈夫、大丈夫。お待たせしてすみません」
百合と話していた筋肉質の男性が振り返る。池内さんだ。ニカッと爽やかに微笑む体育会系が、こちらに居直った。
「ご休憩中でしたよね。すみません。トリーツの成分の確認と、今後のお話を少し伺いたくて」
「あぁそうでしたか。えぇと、どんなことでしょう」
池内さんが見せる資料は、無骨な文字が書き加えられていた。きっと彼は真面目なのだ。聞き流して良いことまで全て書き留めている。確かに見た目は暑苦しいかも知れぬが、こういう人こそ相手をきちんと見て愛してくれるタイプだと思う。見目だけに囚われては見えない。相手をじっくり知っていかなければ、気付けないところかも知れない。
少し離れたところで盛り上がっている若い子たちに、チラリと目をやる。池内さんよりも少し背の低い、細身の男性の背中が見えた。
「若い子は楽しそうで、いいですよね」
「え? 池内さんだって、お若いですよ?」
「あぁ、本当ですか。もう三十五になるので、彼らの中に入ると浮くんですよね。若いつもりではいるんですけど」
新卒と三十五じゃ差がありますよね、と笑う顔が寂しそうだった。
「いやぁ、でも関根が突っ込み過ぎですね。あれ、仕事忘れてるでしょう。後で注意しておきます」
申し訳ありません、と百合は頭を下げた、ひどく呆れた眼差しを部下に向けた。それから、大きく溜息を吐く。きっと私たちが思っていることは同じだ。