だって、そう決めたのは私

第37話 本当に良かった

 あれから、並んで電車に乗って帰った。大したことは話さなかったけれど、仕事のこととか教えてくれたカナタ。私も仕事の話をして、両親の話もした。いつかギクシャクしない親子に戻れたら、両親にもきちんと会わせたい。まずはカナタに合わせて、ゆっくりとでもいい。関係を構築できたらと思っている。ちゃんと連絡先も交換した。次の約束だってして整えた。遅くなって宏海には心配されたけれど、私はずっとふわふわしている。あの子をもう一度、この手で抱きしめられた喜びで。

「ねぇ、カナコ」
「ん? なぁに?」
「いや……ちょっとあんた、何があった」

 午前の診察の後に、去勢手術を終えた私たちは片付けをしていた。いつものように何ら変わらない日常であったが、顔を引き攣らせた親友が心配そうにこちらを覗いている。昨日はあの日でしょう? と暁子が心配そうに言う。カナコは頷いてから、彼女に身を寄せた。
< 165 / 208 >

この作品をシェア

pagetop