だって、そう決めたのは私
「というわけなので、今日定時で帰ります。あの子の誕生日祝いするの」
「あら、それじゃ定時は当然ね。今日だけはカルテ整理も頼まれてあげるわよ?」
「本当? 出来るだけやっていくけれど、もしもの時はよろしくお願いします」
「任せなさい。で、お店とか決めたの? カナコ、そういうの苦手じゃない」
「そうなんだよね……焼肉食べたいって言ってたから、何とかなるかしらって思ってるんだけど。無理かな」
「えぇ、無理ね。カナコ、優柔不断だし。店とか興味無いでしょ。これまで、とりあえず飲めればいいやって人生だったのよ? 久しぶりの親子デートに適した店なんて、あなた知らないでしょう」
そこまで言うか。彼女の評価はもっともだが、馬鹿正直に言葉にされるとまぁまぁ傷つくものである。
「あ、渉くんに聞いたら? あの子、すごくいい店知ってるのよね」
「五十嵐くんか。今休憩中かな」
ササッと彼に連絡を入れる。適当に挨拶をして、若い子が満足できそうな良い焼肉屋教えてください、と。正直に、実に簡潔なメッセージである。
「そう言えば、五十嵐くんとどうなった?」
「結構会ってるよ。時々ドライブしたり、食事に行ったり」
「へぇぇ。いい感じじゃない」
「そんなことないわよ。だいぶ年が離れてるから、話が合わないこともあるし。弟みたいなものだけど、弟と言うにもね。ちょっと難しいかと思うことがある」
「うぅん……暁子は、彼と一緒にいて楽しい?」
「それがさ……楽しいのよ。結構、互いの距離感が合ってるというか。踏み入って欲しくないラインが分かってる。だから、気が楽ではあるし。今度温泉に行きませんかって誘われてるんだけど……まぁそれはね、保留にしてるところ」
楽しそうに話をした顔が、翳った。暁子はまだ、彼への感情に踏み込めずにいる。本当に慎重に温めている感じがした。
「あら、それじゃ定時は当然ね。今日だけはカルテ整理も頼まれてあげるわよ?」
「本当? 出来るだけやっていくけれど、もしもの時はよろしくお願いします」
「任せなさい。で、お店とか決めたの? カナコ、そういうの苦手じゃない」
「そうなんだよね……焼肉食べたいって言ってたから、何とかなるかしらって思ってるんだけど。無理かな」
「えぇ、無理ね。カナコ、優柔不断だし。店とか興味無いでしょ。これまで、とりあえず飲めればいいやって人生だったのよ? 久しぶりの親子デートに適した店なんて、あなた知らないでしょう」
そこまで言うか。彼女の評価はもっともだが、馬鹿正直に言葉にされるとまぁまぁ傷つくものである。
「あ、渉くんに聞いたら? あの子、すごくいい店知ってるのよね」
「五十嵐くんか。今休憩中かな」
ササッと彼に連絡を入れる。適当に挨拶をして、若い子が満足できそうな良い焼肉屋教えてください、と。正直に、実に簡潔なメッセージである。
「そう言えば、五十嵐くんとどうなった?」
「結構会ってるよ。時々ドライブしたり、食事に行ったり」
「へぇぇ。いい感じじゃない」
「そんなことないわよ。だいぶ年が離れてるから、話が合わないこともあるし。弟みたいなものだけど、弟と言うにもね。ちょっと難しいかと思うことがある」
「うぅん……暁子は、彼と一緒にいて楽しい?」
「それがさ……楽しいのよ。結構、互いの距離感が合ってるというか。踏み入って欲しくないラインが分かってる。だから、気が楽ではあるし。今度温泉に行きませんかって誘われてるんだけど……まぁそれはね、保留にしてるところ」
楽しそうに話をした顔が、翳った。暁子はまだ、彼への感情に踏み込めずにいる。本当に慎重に温めている感じがした。