だって、そう決めたのは私
「この間ね……手を握られたのよ」
更にくっついてきた暁子が、小さな声で言った。お、と感嘆を上げたが、彼女は複雑そうな顔をしている。
「ちょっとドキドキはしたの。真剣な顔して、僕は本気ですって言うから」
「でも、暁子は躊躇いがある。そんなところ?」
コクリと暁子が頷く。恋をしている少女のように。
「素直にその気持を五十嵐くんに話してみたらいいんじゃないかな。それでどうするかが、二人の形じゃない。わざわざ恋愛に落とし込まなくたっていいんだし。包み隠さず話をして、分かり合えるのかって大事だと思うな」
「分かり合えるかぁ……確かにそうよね。あぁもう、そんなことよりもカナコは、今晩のデートを大事にね」
「うん。有難う。あぁもう……本当に好き。暁子」
「何、急に告白してこないでよ」
「あ、照れた?」
ケラケラ笑って片付けを済ます。女、五十歳。生涯で大切にしたいと思える友人に出会えたことは、何よりもこれまでの自分を褒め称えたいことだった。暁子は、親友という枠を超え、家族のような大事な人である。
「あ、カナタ」
「なんて?」
「母さん今夜の仕事大丈夫そう? って」
帰りの電車の中で話しながら、私たちは気付いたのだ。ママって呼び続けるのも恥ずかしいのでは、と。あちらの新しい母親をなんと呼んでいるのかは知らない。カナタは同じくならないようにしたのだろう。色々悩んで、私を『母さん』と呼ぶことにした。まだ慣れない。恐らく、カナタもだろう。
「母さんかぁ。なんか変な感じね。カナコがそう呼ばれるのって」
「そうね、何だかこそばゆいもの」
「あぁあ、私は今夜どうしようかなぁ。茉莉花もゼミの友達とご飯に行くって言うし。渉くんと焼肉でも行こうかなぁ」
「あ、いいんじゃない? でも、違う店にしてね」
「分かってるわよ」
呆れた顔をしてから、彼女は笑った。本当に良かった、と私を抱き締めて。
更にくっついてきた暁子が、小さな声で言った。お、と感嘆を上げたが、彼女は複雑そうな顔をしている。
「ちょっとドキドキはしたの。真剣な顔して、僕は本気ですって言うから」
「でも、暁子は躊躇いがある。そんなところ?」
コクリと暁子が頷く。恋をしている少女のように。
「素直にその気持を五十嵐くんに話してみたらいいんじゃないかな。それでどうするかが、二人の形じゃない。わざわざ恋愛に落とし込まなくたっていいんだし。包み隠さず話をして、分かり合えるのかって大事だと思うな」
「分かり合えるかぁ……確かにそうよね。あぁもう、そんなことよりもカナコは、今晩のデートを大事にね」
「うん。有難う。あぁもう……本当に好き。暁子」
「何、急に告白してこないでよ」
「あ、照れた?」
ケラケラ笑って片付けを済ます。女、五十歳。生涯で大切にしたいと思える友人に出会えたことは、何よりもこれまでの自分を褒め称えたいことだった。暁子は、親友という枠を超え、家族のような大事な人である。
「あ、カナタ」
「なんて?」
「母さん今夜の仕事大丈夫そう? って」
帰りの電車の中で話しながら、私たちは気付いたのだ。ママって呼び続けるのも恥ずかしいのでは、と。あちらの新しい母親をなんと呼んでいるのかは知らない。カナタは同じくならないようにしたのだろう。色々悩んで、私を『母さん』と呼ぶことにした。まだ慣れない。恐らく、カナタもだろう。
「母さんかぁ。なんか変な感じね。カナコがそう呼ばれるのって」
「そうね、何だかこそばゆいもの」
「あぁあ、私は今夜どうしようかなぁ。茉莉花もゼミの友達とご飯に行くって言うし。渉くんと焼肉でも行こうかなぁ」
「あ、いいんじゃない? でも、違う店にしてね」
「分かってるわよ」
呆れた顔をしてから、彼女は笑った。本当に良かった、と私を抱き締めて。