だって、そう決めたのは私
「昨日から考えてて」
「ん? 何を」
「その、おじいちゃん達のことと、中川さんのこと」
「あぁ……そっか。宏海にも会って欲しい……って、もう会ってるのか」
「そうなんだよね。で、これから仕事の関係もあるし。どうしたらいいのかなって」

 むむむ、と顎を揉む。すると、腕を組んでいたカナタも、同じように顎を揉んだ。それが可笑しくて、嬉しくて。笑って、また泣いた。あぁそういえばこの子は、私のこの癖を真似していたことがあったっけ。

「宏海には、私からきちんと説明するよ」
「うん。中川さんは、そもそも息子がいるって知ってるの?」
「いや……何も知らない。岩手にいたことも、知らない。宏海は本当に何も知らないの」
「そうなんだ……」
「あ、息子がいることを隠したかったわけじゃないの。その……私と宏海との関係性の問題で。でも、言い方が悪かったわ。ごめんなさい」

 私は被害者ではない。いや、一部被害者ではあるけれど。最大の被害者はカナタだ。息子に寂しい思いをさせ、一人で節約暮らしをさせてしまった。むしろ私は、償わなければならない。

「それも、いつか教えてくれる?」
「宏海とのことね。そうね、順を追って話をしようね」
「うん。それまではちゃんと、担当者として仕事に徹します。でもなんかさ、難しいミッション与えられてるみたい」

 やり遂げますけどね、とカナタがニヤリと笑った。宏海との関係は、これから変わるか……自信はない。でも、ちゃんと紹介出来ればいいなと思っている。夫とまでいかなくとも、ママの大切な人です、と。

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