だって、そう決めたのは私

第43話 晴れ晴れと笑った

「で? 俺にどうしろと? はいはい、辛いですねぇ、宏海ちゃんとでも言えってか」
「……まぁくんの意地悪」

 羽根のカウンターに突っ伏した僕に、まだ暑いのにホットココアを出す幼馴染は、そうやって僕を弄った。元々スラッとしてる男だから、マスターのベストもよく似合う。こういう男がきっと、カナちゃんの好きな人なんだよな。そんなことに気付くと、僕はまた深く項垂れた。

「何なんだよ。ジメジメして」
「ジメジメなんて……してるか」
「してるわ。自覚があんならいいけどよ」
「まぁくん」
「涙目で俺を見るな。どうせカナコのことだろ」

 盛大な溜息を吐いて、彼は僕の頭を撫でた。いつまでも子供扱いだ。同じだけ年を取ってきたというのに。

「ねぇ、まぁくん。最近カナちゃんに会った?」
「あ、カナコ? こないだお前のコーヒー買いに来た時以来、会ってねぇよ」
「連絡は取ってる?」
「取ったかな……ブンタのことで何か連絡したと思ったけど」

 まず疑うべきは、彼だと思った。そんなに新しい出会いがあるとも思えないし、僕以外の身近にいる人間は彼くらいだから。でも、まぁくんにはこの間の女の子がいる。相手がどう思っているか別として、彼は恋をしていると思う。だから念の為聞いたけれど、やっぱり違うみたいだ。まぁくんは、こんな顔で嘘を吐かない。
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