だって、そう決めたのは私
「宏海、指輪だ」
「指輪?」
「おぉ。シチュエーションは後から考えるとして、マストは指輪らしいぞ。言われてみれば……まぁそうか。手ぶらで伝えるのも、本気度が伝わらねぇだろうし」
「指輪か……」
今つけているペアリングに触れる。これはこの生活を始める時に買ったもの。毎日つけやすい価格の、普通のペアリングだ。特に彼女は仕事では外すことになるし、あまり高くないものにしたんだった。プロポーズをするならば、婚約指輪みたいな価格のものにするのかな。いくら位が妥当だろう。そもそもこんなシチュエーションでプロポーズをする人などいない。手本がないのだ。
「宏海、お前作れば?」
「指輪を?」
「そう。器用だし、出来そうじゃん。もしもカナコがちゃんとしたのを欲しがったら、それはその時。宏海の真剣な気持ちを伝えるのなら、金じゃねぇ。多分、そういう手間とか時間を掛けた愛情だ」
「愛情……」
茶化してやろうかと思ったけれど、その通りな気もした。大きな宝石が付いていたって、きっとカナちゃんは喜ばない。彼の言うように、真剣だと伝えるには石の大きさじゃないだろう。彼女のことを思って作る、か。喜ばれなかったらどうしよう、とも思うけれど、1カラットのダイヤよりもカナちゃんには響く気がした。
「まぁくん、やってみようかな。やったことがないから、手順とかわからないけど。ダメだったら、ちゃんと買うことにするよ」
「おぉ、おぉ。そうしろ。困ったらまた、ココア飲みに来いよ」
「うん」
そうだ。池内くんに、聞いてみよう。スッとメッセージアプリを立ち上げて、彼に連絡を入れる。彫金をやっている人がいたら紹介してもらえませんか、と。直ぐに返信がなくたって、何だかようやく目の前が開けた気がして、さっきよりもココアが身に染みる。だからようやく、僕は晴れ晴れと笑った。
「指輪?」
「おぉ。シチュエーションは後から考えるとして、マストは指輪らしいぞ。言われてみれば……まぁそうか。手ぶらで伝えるのも、本気度が伝わらねぇだろうし」
「指輪か……」
今つけているペアリングに触れる。これはこの生活を始める時に買ったもの。毎日つけやすい価格の、普通のペアリングだ。特に彼女は仕事では外すことになるし、あまり高くないものにしたんだった。プロポーズをするならば、婚約指輪みたいな価格のものにするのかな。いくら位が妥当だろう。そもそもこんなシチュエーションでプロポーズをする人などいない。手本がないのだ。
「宏海、お前作れば?」
「指輪を?」
「そう。器用だし、出来そうじゃん。もしもカナコがちゃんとしたのを欲しがったら、それはその時。宏海の真剣な気持ちを伝えるのなら、金じゃねぇ。多分、そういう手間とか時間を掛けた愛情だ」
「愛情……」
茶化してやろうかと思ったけれど、その通りな気もした。大きな宝石が付いていたって、きっとカナちゃんは喜ばない。彼の言うように、真剣だと伝えるには石の大きさじゃないだろう。彼女のことを思って作る、か。喜ばれなかったらどうしよう、とも思うけれど、1カラットのダイヤよりもカナちゃんには響く気がした。
「まぁくん、やってみようかな。やったことがないから、手順とかわからないけど。ダメだったら、ちゃんと買うことにするよ」
「おぉ、おぉ。そうしろ。困ったらまた、ココア飲みに来いよ」
「うん」
そうだ。池内くんに、聞いてみよう。スッとメッセージアプリを立ち上げて、彼に連絡を入れる。彫金をやっている人がいたら紹介してもらえませんか、と。直ぐに返信がなくたって、何だかようやく目の前が開けた気がして、さっきよりもココアが身に染みる。だからようやく、僕は晴れ晴れと笑った。