だって、そう決めたのは私
『そうなんだ。何となく分かった』
『母さんにとって、中川さんはただの同居人ってこと?』

 本当は、好きなの? と問うてみたかった。でも、聞けない。ただの好奇心で、母との溝を深めたくないから。

 だって普通なら、問われたところで、息子にそんなことを真面目に答えない。この件は、どう聞いたって返ってこないだろう。実際に、返ってこなかった。でも今朝のことだ。俺は、母の素直な気持ちでシャキッと目が冷めたのである。

『今は確かに同居人だね。でもね、母さんは彼のことが好きだよ』

 この返信までの時間。それが余計に彼女の決意表明に感じられた。こっちは、好きかどうか問うたわけじゃないのだ。きっとこれは、嘘じゃない本心なんだろうと思った。

 でも、互いに思い合っているのに、それを伝えてはいない。勇気が出ないということなのだろうか。それとも、まだ知らない何かがハードルになっているのだろうか。朝から悶々と考えている。それで二人は幸せなのだろうか、と。
< 195 / 208 >

この作品をシェア

pagetop