だって、そう決めたのは私
「同性、異性というよりも、性格の問題なんだろうけどね。私や百合は、苛立ちが勝ってたと思う。でも五十嵐くんは、とても穏やかに場を収めてくれたんだ。小さい子を諭すようではあったけれど、あの時の彼女はそれで良かったと思うよ」
「へぇ、そうなんだ」
「うん。あ、そうだ。今度、鎌倉に行くんだって?」
「え、何で知ってるの」
「五十嵐くんは、暁子のことを大切に思ってるからね。私に不義理を働いてはいけないって思ってるみたいなの。だから最近は、毎週報告と相談受けてるんだよね」
「あぁ……なんかごめん?」

 二人で首を傾げ、ちょっと笑った。五十嵐くんはきっと、この報告はずっと続けていくだろう。暁子と正式にお付き合いしたら、なくなるのだろうが。それまでは律儀に続いていく気がする。

「ねぇ暁子。彼を応援してて大丈夫?」
「……うん。そろそろね、ちゃんと答えなきゃなって思ってるの。ほら、前にカナコ言ったなじゃい? 宏海くんのこと認めたくなかったけど、今のポジションを誰にも渡したくないって。それと同じような気持ちなのかなって、最近思うようになって。渉くんが他の人と結婚とかするのを祝福できるかって思ったら、ちょっと嫌だなって思ったの」

 気恥ずかしそうに言う暁子は、ちゃんと恋する女の顔だった。

 私がそう言ったのだから、その気持は当然分かる。宏海と共に過ごす時間が楽しくて、幸せで、誰にも取られたくない。私の場所に、他の人がいるのを想像できないし、したくないのだ。それはきっと、匡にだって。
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