だって、そう決めたのは私
「暁子、私もね。カナタとのことがきちんと落ち着いたら、宏海に打ち明けようと思ってるの。カナタのことも全部話して、きちんと気持ちも伝えようって」
「カナコ……そこまで決意を固めたの?」
「うん。別の問題が起きたら冷静になった、というか。問題がクリアになったというか。これはきちんとケリを付けなきゃいけない問題で。特に私たちは、もう生活を共にしてるからね。ダラダラともし続けられないし」

 言葉にすると、どんどんブラッシュアップされる。宏海には、全て話をしなきゃいけない。包み隠さず、本当の気持ちをぶつけたい。匡への気持ちに気付いていることは、知られない方がいいのかも知れないけれど。きちんと彼に、思いを伝えたいと思っている。

「なんかさ。カナコ、ようやく前を見たね」
「どういう意味よ」
「その通りよ。いつだって、諦めてたでしょう? 何をするのも。でも、息子くんと会えて、ようやく自分自身を見るようになった。自分が幸せになる方法を見ることが出来るようになった。そんな風に見えたから」
「そう、かなぁ」

 それは事実だろう。ずっとあの離婚を後悔し、カナタの幸せだけを祈ってきた。そこに自分の幸せなんてなかった。あの子が幸せならばそれだけでいい。そう、ずっと思ってきたから。再会することが出来て、もう一度あの子の名を呼べた。大人になった顔も見られて、毎日連絡も出来ている。

 そんな日々に興奮し、安心して、私は自分の内側に目を向けたのだ。何も見えていなかった未来を、少しずつ見るようになった。暁子の言う通り。もう数十年と考えていなかった自分の幸せについて考え、行動をしようとしている。色んな感情を忘れていて、ハッとすることもあるけれど。私は今、ようやく幸せに手を伸ばそうとしている。
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