だって、そう決めたのは私
第6話 小娘だった頃
宏海は、高校の同級生である斎藤匡の幼馴染だ。学年はひとつ下。匡の実家の喫茶店・ジャズ喫茶羽根でよく会う男の子。それが中川宏海という男の子だった。私だけでなく、友人たちも皆可愛がっていて、勉強を教えてあげたり、一緒にクリスマスパーティをしたりしたっけ。皆の弟のような、ただそれだけの関係だ。特に連絡先も知らないし、会うのはあの店だけだった。だから、自分たちが卒業した後で、彼がどうしたかなんて全く知らない。それがこんなことになったのは、ひょんなことで宏海と再会したからである。あぁそうだ。今日みたいな、とても暑い日だった――