だって、そう決めたのは私
「あぁ……ダメだな」

 休日の夕方、実家を飛び出した。ザッザッと音を立てながら、目的もなく足早に歩いている。軽快な足取り、といかないのは、心が重たいせいか。それとも、このサンダルが歩きにくいせいか。散歩だと嘘を吐いて出てきたんだ。あぁ、スニーカーくらい履いて出れば良かった。

 一度立ち止まり、深く息を吸う。それから、胸のもやもやを一気に吐き出した。

 私は一人っ子である。離婚をして暫くは実家にいたが、今は一人暮らし。病院と実家の真ん中辺りの小さなワンルームが、私の城である。時折、こうして帰って来ては、母の愚痴を聞き、色んなことが億劫になってきた両親をサポートしている……つもりだった。時々帰ってきて、元気な顔を見せてくれるだけでいいのよ。母が言った言葉をそのまま素直に受け止めていた。けれどそれは、私の独りよがりだったのかもしれない。
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