だって、そう決めたのは私
「はぁ……」

 広い園内を半周。向かいから人が来れば、植物を見ているフリをした。何も気にせず歩けばいいのに。さっきの幸せそうな家族がチラついて、自分がとても寂しい女である気がしてしまう。足取りは重たい。自販機で水を買い、ようやく腰を下ろした。一口飲んだだけで大きな溜息が出てくるほど、酒を飲みに行く気力も消え、ひどく萎えている。

 母の嘆きを聞いて、耳を塞ぎ飛び出した。それだけだったら良かったんだ。温かな家族を目の当たりにして、現実を突きつけられた気がした。いつもなら気にならないような風景だった。ただ今日は、既に負の感情を抱えている。自分にはもう戻ってこない景色だ、と嘲笑われたような気がした。私だって離婚しなければ今頃――そこまで思って首を振った。

 母が何か言いたくなる気持ちも、本当は分かっている。端から見れば、私は生きる目的が明るくない。その日を何とか生き延びているように見えるのだろう。出来ることならば、母と喧嘩はしたくない。けれど、結婚して家庭を成すことが女の幸せだと決めつけている母とは、やはり相容れなかった。

 私は私の人生を、自分で選んで生きている。それが幸せだ。そう思っていてきたけれど、やはり間違いなのだろうか。
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