だって、そう決めたのは私
「あ、こういうの怪しいですよね。すみません。ただのお節介なので、お気になさらず」
「え、えっ」

 彼の顔も見ずに早口でまくし立て、ペットボトルを引き下げた。顔が急に熱くなる。では、とペコリ頭を下げて踵を返した。

 良いことをしたかったわけじゃない。マロンちゃんが靴を履いているほどの暑さで、あの人も喉乾いているんじゃないかと勝手に心配しただけだ。あぁ今日は、何をやってもだめだな。

「違う、待って。待って……あの、カナちゃん。カナちゃんじゃない?」

 懐かしい響きだった。今はそう呼ぶ人はほぼいないが、遥か昔に呼ばれていたことがある。カナちゃん。まだ何も知らない小娘だった頃に、呼ばれていた名だった。
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