だって、そう決めたのは私
「そう言う宏海は、何やってるの?」
「僕? 革を使って小物を作ってるよ。バッグとか、色々。色んなデザイナーさんとコラボしたりして、ネットで売ってる。そこそこ売れてるんだよ」
「へぇ。そうなんだ。全然想像してない職業だった」
「あぁ、そうかもねぇ。インターネットが発達してくれたおかげで、色んな人と繋がって、販売経路も広がってる。有り難い時代です」

 柔らかく微笑んだ宏海に、昔の面影を見た。あぁ変わっていない。マロンちゃんみたいに、キラキラした瞳。くたびれきった顔で、家と仕事場を往復している私とは違う。彼はきっと、毎日刺激的に生きているのだろう。そう思えば羨ましくて、恥ずかしくて……何となく視線を落とした。後ろめたい生活を送っているわけでもないのに。

「私は門外漢だから分からないけれど、何だか凄いねぇ」

 下ばかり見てしまいそうになって、思い切り上を見上げた。しがない大衆酒場だ。元々のお目当てである肉豆腐を頬張って、無理矢理に笑った。宏海の指をちらりと見る。彼も指輪などはしていない。でも恋愛話は、彼には……聞けないな。

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