だって、そう決めたのは私
「担当営業の人が、基本的には開拓していくみたい。僕の担当は、今は二人いて。池内(いけうち)くんっていう、こう筋肉ムキムキな子がずっと担当してくれている子で。彼が相談に乗ってくれて、色んな商品が出来たんだ。それから最近、もう一人担当の子が増えたの」
「へぇ。宏海の仕事の話、初めてちゃんと聞いたかも。何か、そんなに忙しいのにさ。毎日お弁当、ありがとうね」
「何、急に。照れるじゃん。いいよぉ。どうせ自分のも作るし。気にしないで」
「うん。あ、そうだ。今日の卵焼き、甘かったね」
「凄い、気付いたんだね。ちょっと他のおかずがしょっぱかったからね。バランスだよ」
「へぇ。若い子に、お弁当褒められちゃった。旦那さん凄いですねぇって」

 どこか自嘲気味だったことは認める。だって、そう言いながら下を向いたのだから。

「凄いかなぁ。でも、世間との形は違えど夫婦なんだから、支え合うのが当然でしょう? たまたま僕が料理が好きだったっていうだけだし。カナちゃんにしか出来ないことも、沢山あるじゃない」
「そうかなぁ」
「そうだよ」

 今のところ、宏海におんぶにだっこであることは否めない。掃除や洗濯といった物は私が担当してやっているが、それでも宏海がこっそりフォローしてくれているのも知っている。よくよく考えれば、私は迷惑しか掛けていないんじゃないか。この生活、宏海にプラスになるようなことはあるのだろうか。表情を崩さないままに、ちょっと落ち込んだ。
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