だって、そう決めたのは私
「ありがとう。もう少し、練ってみるよ。佐々木くんの説明も分かり易くて助かりました。絵も上手なんだね」
「いえ、ありがとうございます」
「そうなんですよ。羨ましいから、俺も練習したんですけどね。ダメでした」

 池内は、きっといい先輩なのだろうな。後輩である佐々木が褒められれば、自分のことのように喜んでいるし、聞けばきちんと評価している。会社という箱の中の立ち位置は分からないが、弟でも愛でているかのような様子だ。微笑ましいものである。


「それが、佐々木は絵だけじゃなくって勉強家なんですよ。この間一緒に行った会社も、佐々木が熱心にプレゼンしてゲットしたんです。情報をしっかり予習してて、俺の方が助けられてますねぇ、今や」
「へぇ、凄い」
「いや……たまたま好きだったんですよ。そういう話が」
「そういう話?」
「あぁその会社、ペットフードなんかを扱ってて、営業の方と動物の話になるんですよ。でも俺は、動物とかよく知らなくて。犬猫が関の山。うさぎとか分かるけど、生態なんてとんでもない。そうしたら、佐々木は本当によく知ってて。うさぎだと匂いがきついのもダメですよね、とか言うから感心しちゃいました」
「へぇ。そうなんだ」

その場面が、まざまざと思い浮かんで頬が緩んだ。
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