だって、そう決めたのは私

第12話 そういう好きも、あっていい

「暁子、モカ様のカルテ見ておいて」
「はぁい。どうした? 今日来てないよね」
「あ、うん。でも最近食欲が落ちてるらしくて。五十嵐くんが気にしてたから。週末にでも来るかなって」
「あぁそういうこと。分かった」

 閉院作業後の暁子とするカルテ確認。互いの患者のすり合わせみたいなものだ。パートの子たちもいるけれど、常勤は私達だけ。だから常に、情報を共有するようにして来た。彼女の父、前院長の名残かもしれないが。今は電子カルテになっていて、タブレットやパソコンで済むようになった。体力的には有り難いが、まぁ目は疲れる。

「ん。あ、百合か」
「どした? 急用?」
「ううん。今度、他社との親睦会があるから出て欲しいって」
「へぇ。親睦会」
「そう。ペットフードを取り扱ってくれる会社でね。この間、話を詰めるって言ってたけど、それが上手くいったんじゃないかな。はい、どうぞ」
「ありがと」

 コーヒーの入ったマグカップを彼女のデスクに置く。休憩室にあるホットコーヒー。片付けついでに、いつもこうして二人で飲む。もう煮詰まって、美味しくはない。でも、それを親友と飲むこの時間は、嫌いじゃなかった。
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