だって、そう決めたのは私
「カナコさんに思い切って相談して良かったです」
「いや、まだ何も始まってないからね」
「そうなんですけど。皆にカナコさんに相談してみろって、ずっと言われてて」
「皆?」
「あ、はい。うちの課の若いのが、背を押してくれまして」
「若いの……あぁ、なるほど」

 恐らくそれは、昼に渉の話を聞いていた時、視界の端に映った子たちだろう。何だかソワソワと見守っている様子ではあったが、まさか相談していたとは。普通、プライベートな相談を部下にはしないと思っていたが……違うのか。いや、それもこれも、渉の人柄なのだろう。

「ふふ、恋って良いわね。そうやって皆に相談して、励まされたり。背を押して貰ったり。それにドキドキして、色んな感情が湧いて」
「そうですね。お恥ずかしながら、この年まであまり恋愛というのをしてこなかったので……本当にどうしたら良いのか分からなくて。頼れるもの全て頼りました」
「きっと五十嵐くんのこと、皆好きなのよ。頼りにしてるし、頼られたら助けてあげたい。そう思ってるんじゃないかな。ふふ、いい関係ね」
「そうですかね……そうだといいなぁ。そういう関係を暁子先生とも作れたらいいんですけど」
「まぁそこは焦らずにいこう」

 はい、と応える渉は、少し鼻を膨らませている。暁子と仲良くなることに、今からやる気を出しているようだ。空回りしないと良いけれど。
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