だって、そう決めたのは私

「カナちゃんは赤い色がいいよね」
「え、なんで?」
「んー、色が白いでしょう? だから映える色がいいというか。それにカナちゃん、あまり派手な服は着ないじゃない」
「あぁ……まぁそうだけど」
「仕事柄、ネイルとかもしないだろうし。それならば、そういう小物は色味があった方がいいかなって」

 ネイル、と言われてドキンとした。あの記事の中で微笑んでいた女の、綺麗に整えられた手。短い爪の小傷ばかりの手を思わず隠した。自分の頑張った結晶だと思ってはいるけれど、今夜はどうしても恥ずかしかったから。

「頑張ってる綺麗な手だって、僕は思うな」

ギュッと握り込んだ手を、宏海がじっと見つめていた。

「ネイルとかしてなくたって、頑張り屋さんの手だもん。綺麗だよ」
「いや……」

 弱っているのだろうか。あの記事のダメージは、それほどに大きかったのだろうか。顎に触れ、潤みそうになる目をギュッと瞑る。それから……本当に何となく、宏海の肩にもたれた。

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