だって、そう決めたのは私
第19話 仮初の夫
「焼き鳥って何で美味しいんだろうねぇ」
意味のないことを言っていた。今晩は、五十嵐くんとの約束の日。ずっと、自然に誘ってと言い聞かせてきたし、いつも通りにすればいい。ドキドキはしたけれど、多分怪しまれずに連れてこられた。まずは第一段階突破というところ。だが、五十嵐くんが来た時の『自然さ』を演出するために、緊張はまだ続いている。
「何言ってんの、カナコ。物思いにふけて。あ、ついにあれか。恋が芽生えたのか」
はぁ? と睨みつければ、暁子はキャッキャと楽しそうに腹を抱えた。今は、私の話を掘り下げられたくない。それに、簡単に触れて欲しくもなかった。
「で?」
「ん?」
「今日、本当は何を狙ってるの」
「え……何の話」
「あのねぇ。何年一緒にいると思ってんのよ。そんなガチガチ固まった顔で焼き鳥誘われて、何も怪しまれないとでも思ったわけ?」
ピシリ、と音を立てて、目の前の景色がひび割れていく。完璧だと思ったのに。恐る恐る暁子と目を合わせ、どうやら全てお見通しだと悟る。もう上手くいったと思ったのに。そう呟きながらテーブルに突っ伏した私に、暁子はケラケラとまた嬉しそうに笑った。やっぱりこういうことは、性に合わないのだ。ムスッとした顔を上げたら、ちょうど五十嵐くんが視界に入った。タイミングが良いのか、悪いのか。瞬時に申し訳ない気持ちになった。
意味のないことを言っていた。今晩は、五十嵐くんとの約束の日。ずっと、自然に誘ってと言い聞かせてきたし、いつも通りにすればいい。ドキドキはしたけれど、多分怪しまれずに連れてこられた。まずは第一段階突破というところ。だが、五十嵐くんが来た時の『自然さ』を演出するために、緊張はまだ続いている。
「何言ってんの、カナコ。物思いにふけて。あ、ついにあれか。恋が芽生えたのか」
はぁ? と睨みつければ、暁子はキャッキャと楽しそうに腹を抱えた。今は、私の話を掘り下げられたくない。それに、簡単に触れて欲しくもなかった。
「で?」
「ん?」
「今日、本当は何を狙ってるの」
「え……何の話」
「あのねぇ。何年一緒にいると思ってんのよ。そんなガチガチ固まった顔で焼き鳥誘われて、何も怪しまれないとでも思ったわけ?」
ピシリ、と音を立てて、目の前の景色がひび割れていく。完璧だと思ったのに。恐る恐る暁子と目を合わせ、どうやら全てお見通しだと悟る。もう上手くいったと思ったのに。そう呟きながらテーブルに突っ伏した私に、暁子はケラケラとまた嬉しそうに笑った。やっぱりこういうことは、性に合わないのだ。ムスッとした顔を上げたら、ちょうど五十嵐くんが視界に入った。タイミングが良いのか、悪いのか。瞬時に申し訳ない気持ちになった。