だって、そう決めたのは私
 今日のことは、きちんと先に茉莉花には連絡してある。あの子が嫌ならば、即中止にするつもりだった。でも彼女は、母に支えてくれる人が出来るならば嬉しいと言った。それがとんでもない奴でなければいい、と。その目利きはカナコに任せられている。まぁ、五十嵐くんならば心配はいらないだろう。

「あ、何すか。楽しそうですね、お二人」
「ん、そう。楽しいのよね。いつもカナコと二人だと愚痴ばっかりで。あとはカナコの惚気話でしょう? だもの、こういう飲み会って新鮮で」
「ちょっと待って。私は惚気けてなんかない」
「いや、惚気けてるね。口を開けば、宏海が宏海がって言うじゃない」
「それはさ……その、宏海の話くらいしかないからじゃない」

 酔い始めた暁子が、何を口走るのかとヒヤヒヤする。このくらいならば、適当に誤魔化せるだろうか。仮に五十嵐くんに知れたところで、多分彼は言いふらすようなことはしないだろうけれど。やっぱりちょっと触れられたくないと思った。それはまだ、私が彼の存在を上手く言い表せないからだろう。名目上は事実婚の夫だ。このままで良いのかは、今は未だに答えが出ない。この関係を壊さずにいるには、何も言ってはいけないことは分かっている。心に正直でありたいけれど、本当に分からないのだ。自分がどうしたいのかが。ずっと彼は、仮初の夫という名のままで良いのだろうか。
< 95 / 139 >

この作品をシェア

pagetop