オディールが死んだ日に
「ねぇ、お母さんってどう言うひとだった?どこで出会ったの?」
「どういうって……お前と真逆だったよ」
「それ、どういう意味?」結は何か難しいことを考えるかのように眉を寄せ唇を尖らせた。
「物静かで、ミステリアスで……時々何を考えてるんだろうって思うことがあったが、それでも一緒にいて心地よかった」
「ふーん、美人だし?」結はどこか面白くなさそうに唇を尖らせる。
「まぁな」俺はロックグラスを傾けると、ぐいと一気に煽った。
「ね、出会いはどこでだったの?何で結婚したの?」
結の質問責めは続く。
「お前に教える義理はない」そっけなく言い追加のスコッチを注ごうとすると、結がその瓶を取り上げた。
「何するんだよ、返せ」
「ヤダ。教えてくれなかったらこれ渡さない」
「何ガキみたいなことしてんだよ。返せ」俺は少し前のめりになって結からボトルを奪い返そうとした。思いがけず近づいた距離。結の整った顔がすぐ近くにあった。翆と俺が使っているシャンプーを使ったのか、翆の香りを感じる。結の血の通った体温まで感じそうになって…
俺は空咳をして
「話すから返せ」結を睨みつけると、
「じゃぁ出会いから」と結は楽しそうにわくわくと目を輝かせた。
クソガキが。翆に似ていなければ速攻で追い出してやるが……いや、そもそも俺は弱みを握られてたんだ。写真をSNSで拡散されてあらぬ噂が出回ったら最悪だ。もうやけくそ気味に俺は話していた。