手袋、片方ずつ


つい、頷いてしまいそうになる......けど。



(〜〜っ、これは演技だもん、騙されちゃだめ、)



〝好き〟って溢れ出そうになるけど。



言えないまま、
ぐっとくちびるを噛み締めたとき。



「雪歩、」



今にも消えそうな声で、
優しく私の名前を紡いだ詩月くん。



「〜〜っ、」



詩月くんが、
私の名前を紡いだと同時。



私のおでこにぶつかる、詩月くんのおでこ。



(〜〜っ、こんなの、ドラマにないっ、)



私だって演技した方がいいかもなのに。



ドラマにないことされると、
余計になにも出来なくて...............っ。



おでこから伝わる、
詩月くんの体温を感じるので精一杯で。



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