手袋、片方ずつ
詩月くんに対して、
〝ばか〟とは言ったけど。
〝嫌〟とは言ってない私は。
コクリと小さく頷いた。
「怖がらせたら、ごめん、」
詩月くんのその言葉が聞こえたと同時。
「............んっ、」
私のくちびるに、
柔らかくて優しい温もりが落とされた。
そのキスは、
きっと世界一甘くて、記憶に残り続けると思う。
「雪歩、一生大事にするから」
「ふふっ。詩月くんってば、
それって、プロポーズみたいだよ?」
「うん。プロポーズしてんの。
手袋、片方ずつすんのは、
この先も、雪歩だけってもう決まってるから」
「うへへっ、なんかニヤける」
幼なじみ歴、16年。
ううん。私にとってはもうすぐ17年。
いつも、
〝手袋、片方ずつ〟する幼なじみと。
──────晴れて恋人同士になりました。