湯田くんのマフラー


ギィッと、少し錆びた音のする。



──────屋上のドアを開けた。



そこには、
予想通り、湯田くんがいて。



「............っ、ゆだ、くん、」



彼を呼ぶ声が、
たぶん、少し声が震えた気がする。



「.....................なに」



やっぱり、
湯田くんは何を考えてるのか分からない。



無口だし、マイペースだし。



本当に、読めない人だと思う。



だけど..............................



「私のこと、
『笑顔にしたい』ってまだ、有効ですか?」



あの時伝えてくれた、
湯田くんの言葉は嘘がないって信じたいから。



震えた声のまま、
湯田くんに、そっと問いかけた。


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