極上溺愛契約婚で甘やかされて~エステで出会ったセラピストは御曹司でした~
 あの男は疑心暗鬼になり彼の心は次第に私に傾いていった。そこに追い打ちをかけるように私はある策に打って出た。まず私はレストランに取り巻きの仲間と共にあの男を誘い出し、わざと私の胸を触らせた。

「あっ……」
「……触りましたね?」
「あっ、す、すみません!」
「女性の胸を触るなんて良くないですねぇ」
「すみません……すみません!」

 必死に謝る彼に対して、私は言う事を聞けば無かった事にすると告げた。

「言う事って……なんですか?」
「私と婚約して。そして私を抱くの。無理なら警察に通報するわよ? 外交官の息子が警察沙汰なんて……親に迷惑かけたくないでしょ?」
「……っ」

 私の脅しにわりと簡単に屈したあの男はそのままなし崩し的に疑心暗鬼が進み十和との婚約を解消したのである。
 彼は十和の家族が住まう家に1人訪れ、十和達に婚約破棄をしたいと告げ、婚約破棄となったのだった。
 これであの男は私のものになった。そして十和は自ら命を絶ったそうだ。やりすぎたかもしれないが、それくらいしないと我慢ならなかった。だって最初にあの男と関係を持ったのは私だもの。
 だが、十和の葬式にて私は十和の兄である玲さんと出会った。彼を一目見ただけで一瞬で欲しくなった。
 あの男は十和が死んでからは塞ぎ込むようになった。だから捨てた。私にまで鬱々としたのが伝わりそうで嫌だったからだ。

(そして玲は、あの地味な女と結婚した)

 だが、あの2人結婚したとは言っていたが、そう言えば指輪は身に着けていなかったような。

(最近よく聞く契約結婚ってやつ?)

 もしそうなら、まだまだチャンスはたっぷりと残されている。
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