極上溺愛契約婚で甘やかされて~エステで出会ったセラピストは御曹司でした~
 十和を失った門倉家は悲しみに包まれた。勿論玲も十和を失い悲しみの底に叩き落された。
 十和の葬式の日。噂話が流れていたのに大勢の参列者が会場に押し寄せた。

(あ……あれは)

 そこには十和との婚約を破棄した元婚約者が、美幸を連れてやってきていた。会場入口にてその姿を見つけた玲は無視できず彼の元に歩み寄る。

「あなた……どうして来たんです?」
「……十和を弔いたいと」
「お隣の方は?」
「はじめましてぇ。古田美幸って言いますぅ」

 美幸は喪服こそ着ていたが、派手な髪型は変わらずピアスにネックレスに高級時計と派手な装飾を身に着けていた。それに喪服のスカートの丈も短く、ストッキングは網状のものだ。

(ちゃんと喪服を着れないなら、来なくてもいいのに)
「あの、古田さん。喪服派手過ぎませんか?」
「えぇ、そうですかぁ?」
「あまり目立つのは良くないですよ」
「でもぉ、時間なかったんでぇ」

 言い訳を続ける美幸。玲は最終的には葬儀会社のスタッフを呼んで美幸を地味な服装に着替えさせたのだった。

「あの人が、あなたの好きな人で?」
「ええ、はい」

 十和の元婚約者を見る玲の目は冷たく、鋭く怒りと敵意に満ち溢れていたのだった。
 そして十和の婚約者は美幸に捨てられ、美幸は玲にターゲットを向けている。

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