極上溺愛契約婚で甘やかされて~エステで出会ったセラピストは御曹司でした~
 ウェイターの女性に案内されて移動した先には白い壁にド派手なシャンデリアがつるされた大広間があった。すでに客が何人か来ており、黒い円卓に置かれた軽食をつまんだりジュースやシャンパンを飲んでいる者もいる。

「玲! 久しぶり!」
「元気! 久しぶり!」

 部屋の左隅付近からツーブロックヘアの長身の男性がどすどすと玲の近くへと歩いてくる。彼の様子から見てどうやら玲の友人もパーティーに駆けつけていたようだ。互いに握手をがっちりと交わし再会を喜んでいると、元気という名の友人は私の存在に気が付いた。

「ああ、えっと……あなたは」
「すまん元気言ってなかったな。私の妻だ」
「えっお前結婚してたの?」
「そうそう。ちょっと忙しくて式とかはまだ全然なんだけど。雪乃さん、挨拶どうぞ」
「えっと、初めまして。雪乃と申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ初めまして。田井中元気です。今日はパーティーに来てくださりありがとうございます。ってかこっちも急に誘ってごめんよ玲と雪乃さん。急遽前倒しになっちゃって」
「いやいや」

 どうやら今日の婚約披露の場の主役だったようだ。そんな元気を追いかけるようにして左隅の扉から白いドレスを着たショートヘアに眼鏡姿の女性が不器用な歩き方で駆け寄って来る。

「あっ元気さん!」
「ああ、夏子ごめんごめん」
「あの、元気のご友人ですかね?」
「はい。門倉玲です。高校大学とお世話になってます。こちらが私の妻の雪乃です」
「あ、門倉雪乃です。初めまして」
「そうでしたか……あっ宮崎夏子って言います。初めまして」

 夏子は全体の見た目こそ地味よりだが、目はぱちっとしていて童顔で可愛らしいめりはりのある顔つきをしていた。彼女もまたご令嬢なのだろうか。

「えっと……玲さん。お2方はどのような方ですか?」
「ああ、元気は高校大学が一緒だった。有名企業の息子で跡継ぎ目指して奮闘中。夏子さんは親が参議議員」
(やっぱ金持ちかあ。だよなあ)
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