極上溺愛契約婚で甘やかされて~エステで出会ったセラピストは御曹司でした~
「なるほど、教えていただきありがとうございます」

 その後はしばらく今日の主役である2人と歓談した。ただ私は自分がどのような人物なのかは伏せて話す事はしなかった。

(皆金持ちだよなあ……)

 主役の2人が一度別室へと向かったタイミングで、客の顔がばっと一斉に出入り口付近へと向けられた。私もつられて出入り口付近へ振り向くと、そこには女性が歩いてきていた。
 金髪のワンレンロングヘア、韓国風の派手なメイクにぱっちりきりっとした目つき、ボディコンみたいな露出度の高い真っ赤な血のようなドレスに赤いネイル。一瞬にして脳裏に焼き付いた。

「あ……」

 この時、彼女を見た玲の声が少し震えた気がした。これは私の気のせいではないとはっきり断言出来る。
 女性はにやりと笑ったが、私と目があった瞬間一瞬にして敵意剥き出しの目を私に向けて来たので、私は思わず床に視線を落とし、玲の腕を掴み別の場所へと誘った。

「雪乃さん……」

 私の名前を呼ぶ玲の声は、これまで聞いた事の無いようなか細さだった。しかし女性はこつこつと赤いハイヒールを鳴らしながらこちらに近づいてきた。
 さすがに回避は無理だ。諦めるしか無い。私の心臓はドキドキと鳴り、背中の産毛が逆立っていく。
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