ジングルベルは、もう鳴らない
「いえいえ。樹里ちゃん、ホント大変だったねぇ」
「まぁね」
「でもあの人。小笠原さん? 多分、彼氏いるでしょ」
「あぁやっぱり? いないとしても、好きな人はいると思う。あの男じゃなくてね」
朱莉がそう言うと、樹里に思い浮かんでいたことも確信に変わる。頷き納得し合う女二人に対して、大樹と斎藤は目を丸めた。香澄が、樹里の邪魔をすることだけに男と縁を切るはずがない。絶対に上手いことやっている。それが香澄という女だ。あの場で言わなかったのは、流石に千裕に同情心があったからである。
「そう言えば、なんで三人はここに?」
疑問に思っていたことを問い掛ける。斎藤が去ったのを確認して、樹里はここまで来たはずだ。大樹がどうしてたのかは確認していなかったが、朱莉までいる。どうして皆が揃っているのか分からなかったのだ。「あぁ、それは平野くんが」と口を開いたのは、斎藤だった。
「松村さんと別れた後に、僕のところに走って来てね。二人を追ってくれって」
「え、追ってくれ?」
「あぁえっと……実はあの人。この間も来てたんです。ほら、樹里さんが斎藤さんのところへ行くって時です。月曜日かな。その時に、前に会った人だって思い出して。さっきもいたから、嫌な予感がしちゃって。でも僕は、あの人が誰だか分からない。とりあえず朱莉さんを呼びに行こうと思って、斎藤さんに僕の携帯を渡して追って貰ったんです」
グッジョブだったよねぇ、と朱莉は大樹の頭を撫でた。それは、まるで飼い犬のように。
それを眺めながら、あぁあの時か、と樹里はすぐに思い出す。斎藤の店へ行こうと会社を出る時だ。頻りにキョロキョロしては、落ち着きがなかった大樹。クリスマスは朱莉と二人か、なんて聞いてきたのだ。正直に言えなかったのは、千裕がどんな存在か判断しきれなかったのだろう。樹里は大樹へ、ありがとうね、と感謝を告げる。彼が朱莉を連れて来なかったら、香澄があんな風に素直に話を聞いてくれたのかは分からない。へへッと鼻を擦った大樹は、照れたようだった。
「まぁね」
「でもあの人。小笠原さん? 多分、彼氏いるでしょ」
「あぁやっぱり? いないとしても、好きな人はいると思う。あの男じゃなくてね」
朱莉がそう言うと、樹里に思い浮かんでいたことも確信に変わる。頷き納得し合う女二人に対して、大樹と斎藤は目を丸めた。香澄が、樹里の邪魔をすることだけに男と縁を切るはずがない。絶対に上手いことやっている。それが香澄という女だ。あの場で言わなかったのは、流石に千裕に同情心があったからである。
「そう言えば、なんで三人はここに?」
疑問に思っていたことを問い掛ける。斎藤が去ったのを確認して、樹里はここまで来たはずだ。大樹がどうしてたのかは確認していなかったが、朱莉までいる。どうして皆が揃っているのか分からなかったのだ。「あぁ、それは平野くんが」と口を開いたのは、斎藤だった。
「松村さんと別れた後に、僕のところに走って来てね。二人を追ってくれって」
「え、追ってくれ?」
「あぁえっと……実はあの人。この間も来てたんです。ほら、樹里さんが斎藤さんのところへ行くって時です。月曜日かな。その時に、前に会った人だって思い出して。さっきもいたから、嫌な予感がしちゃって。でも僕は、あの人が誰だか分からない。とりあえず朱莉さんを呼びに行こうと思って、斎藤さんに僕の携帯を渡して追って貰ったんです」
グッジョブだったよねぇ、と朱莉は大樹の頭を撫でた。それは、まるで飼い犬のように。
それを眺めながら、あぁあの時か、と樹里はすぐに思い出す。斎藤の店へ行こうと会社を出る時だ。頻りにキョロキョロしては、落ち着きがなかった大樹。クリスマスは朱莉と二人か、なんて聞いてきたのだ。正直に言えなかったのは、千裕がどんな存在か判断しきれなかったのだろう。樹里は大樹へ、ありがとうね、と感謝を告げる。彼が朱莉を連れて来なかったら、香澄があんな風に素直に話を聞いてくれたのかは分からない。へへッと鼻を擦った大樹は、照れたようだった。