ジングルベルは、もう鳴らない
「で、私が呼ばれたの。でもさ、ここに来るまでは何のことだか分かんなくて。ただ、平野くんが急いで来てくれって必死だったから」
「そうだったんだ。仕事は大丈夫だった? 朱莉まで、ごめんね」
「そんなのどうだっていいよ。週明けにやればいいことだし。何もなくて良かったよ」
朱莉がいつものように明るく笑ってくれる。彼女がそうしてくれると、樹里もいつからかホッとするようになった。冷たい冬の風をようやく感じる。吸い込む息が体にしみ込んでいく。張り詰めた心が、解けていくようだった。
「さぁてと、帰ろう。樹里ちゃん、明日大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫」
「良かった。じゃあ、また明日ね」
「え? 一緒に帰ろうよ。朱莉も浅草線じゃない」
「ごめん。今日、用事があって。ほら、行くよ。平野くん」
「あ、え? はい」
キョトンとした大樹を引き連れ、朱莉が手を振って去って行く。ニヤリ、とした笑みを添えて。ハッと樹里は、彼女の意図に気付く。あぁ、はめられた。気不味い顔をして、おずおずと斎藤を見つめると、目を合わせた彼の口元が優しく微笑んだ。
「そうだったんだ。仕事は大丈夫だった? 朱莉まで、ごめんね」
「そんなのどうだっていいよ。週明けにやればいいことだし。何もなくて良かったよ」
朱莉がいつものように明るく笑ってくれる。彼女がそうしてくれると、樹里もいつからかホッとするようになった。冷たい冬の風をようやく感じる。吸い込む息が体にしみ込んでいく。張り詰めた心が、解けていくようだった。
「さぁてと、帰ろう。樹里ちゃん、明日大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫」
「良かった。じゃあ、また明日ね」
「え? 一緒に帰ろうよ。朱莉も浅草線じゃない」
「ごめん。今日、用事があって。ほら、行くよ。平野くん」
「あ、え? はい」
キョトンとした大樹を引き連れ、朱莉が手を振って去って行く。ニヤリ、とした笑みを添えて。ハッと樹里は、彼女の意図に気付く。あぁ、はめられた。気不味い顔をして、おずおずと斎藤を見つめると、目を合わせた彼の口元が優しく微笑んだ。