ジングルベルは、もう鳴らない
「斎藤さん。パッケージとか決めたんですか」
「朱莉、流石に早い。パッケージまで行くのはまだ先よ」
「あぁ、そうなんだ。私、部署が全然違うのでよく分かってなくて。すみません」
「いえいえ。僕もちっとも分かってないですよ。松村さんの誘導に乗って、選んでるくらいで。意見を言うのは味だけです」
「まぁ樹里ちゃんは、そういうところは、ちゃんとしてるから。きっと大丈夫です。あぁでも、あの象を描いたらいい気がしますけどねぇ。ほら、ちょっとブサ可愛いっていうか。私も印象に残ってましたし」
ブサ可愛いって、と呆れるように繰り返した時、カウンターに座った客がプッと吹き出した。チラチラとそちらを気にしたが、その人はこちらを見なかった。すると斎藤は、あれはなぁ、と零す。とても気不味そうな顔をして。樹里はそれを見て思い出していた。前に彼が、『ヒロ』と言い掛けたことを。きっとあれは、ヒロミが描いたものなのだ。
「どなたかが描かれたのなら、その方の許可を取れれば問題ないですよ」
「あ、ホント? 分かった。じゃあ……今度聞いて、みるか。でも、あの象そんなに良かった?」
「そうですね。ちょっとこう……印象強かったのは確かです。ガネーシャかと思ったけど、よく見たら普通の象でしたし。でも、あれなんですよね。そうすると、このお店のマスコットみたくなるので、ご両親にも相談された方がいいかもです」
それは嫌だな、と彼はぼやいた。彼女が描いた物を、大々的に店のマスコットに仕立てるのは憚られるのか。複雑な思いはしたが、それでもあのイラストは目を引くだろう。ヒロミが描いたのだとしても、樹里はデザインが良ければ推すつもりでいる。あの不細工な象を。
「朱莉、流石に早い。パッケージまで行くのはまだ先よ」
「あぁ、そうなんだ。私、部署が全然違うのでよく分かってなくて。すみません」
「いえいえ。僕もちっとも分かってないですよ。松村さんの誘導に乗って、選んでるくらいで。意見を言うのは味だけです」
「まぁ樹里ちゃんは、そういうところは、ちゃんとしてるから。きっと大丈夫です。あぁでも、あの象を描いたらいい気がしますけどねぇ。ほら、ちょっとブサ可愛いっていうか。私も印象に残ってましたし」
ブサ可愛いって、と呆れるように繰り返した時、カウンターに座った客がプッと吹き出した。チラチラとそちらを気にしたが、その人はこちらを見なかった。すると斎藤は、あれはなぁ、と零す。とても気不味そうな顔をして。樹里はそれを見て思い出していた。前に彼が、『ヒロ』と言い掛けたことを。きっとあれは、ヒロミが描いたものなのだ。
「どなたかが描かれたのなら、その方の許可を取れれば問題ないですよ」
「あ、ホント? 分かった。じゃあ……今度聞いて、みるか。でも、あの象そんなに良かった?」
「そうですね。ちょっとこう……印象強かったのは確かです。ガネーシャかと思ったけど、よく見たら普通の象でしたし。でも、あれなんですよね。そうすると、このお店のマスコットみたくなるので、ご両親にも相談された方がいいかもです」
それは嫌だな、と彼はぼやいた。彼女が描いた物を、大々的に店のマスコットに仕立てるのは憚られるのか。複雑な思いはしたが、それでもあのイラストは目を引くだろう。ヒロミが描いたのだとしても、樹里はデザインが良ければ推すつもりでいる。あの不細工な象を。